HAPPY PAINT PROJECT After Stories
~流山の過去・現在・未来を伝え、残す。流鉄流山駅壁画プロジェクト~

  • HAPPY PAINT PROJECT

2025/02/14

「After Stories : HAPPY PAINT PROJECT」は、当社のCSR活動「HAPPY PAINT PROJECT」が、皆さんにどのような「HAPPY」をもたらし、どのように人々の心に残るのかを探ります。これまでに学校の壁面にアートを描いた小学校や、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、先生と保護者が校内に塗装を行った小学校、子どもたちと風力発電機にアートを描いた風力発電事業会社でお話を伺ってきました。

■ 第1回目の記事はこちら(神奈川県湯河原市立湯河原小学校 壁画ペイントアート)
■ 第2回目の記事はこちら(石川県かほく市立大海小学校 校舎内壁 抗ウイルス塗料塗装プロジェクト)
■ 第3回目の記事はこちら(株式会社ユーラスエナジーホールディングス 風車のパーツへのペイントアート)


第4回目は、株式会社WaCreationが運営する、千葉県流山市の「machimin」です。machiminとは「まちをみんなでつくる」を略したもので、流鉄流山駅に併設されていたタクシー車庫をリノベーションし設立された多目的施設です。コミュニティスペースはもちろん、観光案内所や菓子製造所としても使用されています。2019年秋から冬にかけて、流鉄倉庫を囲う約100mのトタン壁にmachiminが主体となり当社塗料を用いてアートを描きました。

今回は、アートプロジェクトのディレクターを務められた株式会社WaCreation代表、machiminオーナー 手塚純子様、プロジェクトリーダー 知念ありさ様に当時を振り返っていただき、そして、完成から4年以上経った現在についてお話を伺いました。



― アートプロジェクト始動の契機について教えてください
(手塚様)
2018年4月に設立したmachiminは、市民交流の場として、文化醸成の場としてさまざまな役割を果たしてきており、ある程度活動が安定している状態でした。しかし、「まちそのものを良くしているか」と問われるとチャレンジが必要だなと感じていました。

また、私はmachiminの横にある約100mの赤さびトタン壁の存在がずっと気になっており、せっかくmachiminがまちを盛り上げていくコミュニティスペースとして認知されていても、トタン壁が赤さびを帯びたままだと、「衰退していくのかな」という印象を持たれかねないなと危惧していました。そんな時に、数々の偶然が重なり合い、2019年の夏から、赤さびトタン壁にアートを描く大規模なプロジェクトがスタートすることとなりました。


流鉄倉庫を囲む赤さびトタン壁


― どんな「偶然」だったのでしょうか
(手塚様)
プロジェクトが立ち上がる1年前のイベントで出会った東京藝術大学出身でアーティストのありささんが、machiminの活動やプロジェクトに共感してくれ、やりたいことを実現するための方法を一緒に考えてくれました。アーティストが一定期間滞在し、創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」という方法で、約100mの壁画を生み出せるアーティストに参画してもらってはどうだろう?と検討していたところ、ありささんのロンドン芸術大学留学中の友人であるクレアが、日本に大変興味を持っており立候補してくれたのです。

ただ、アーティストが決まったものの、トタン壁にこびりついた赤さびが次なる課題として立ちはだかります。machiminの活動を記録しているFacebookに「さびの処置方法が分からないけれど、ホームセンターで購入したさび止めを使用してみます!」と何気なく投稿したところ、それをたまたま目にした流山市在住の日本ペイント社員の方がメッセージを送ってくださいました。日本ペイントさんには我々のプロジェクトに深く共感いただき、塗料の相談だけでなく、プロジェクトにかかる全ての塗料を提供していただけることになりました。


 

(知念氏)私自身がアーティストなので、クレアの考えを具現化するためのサポートや滞在期間の生活サポートをしていました。クレアと手塚さん、クレアと市民の方との通訳などのコミュニケーションケアも丁寧に行っていました。クレアが「日本でアート活動をしてみたい」と話していた時とちょうど同じ時期に、machiminの皆は赤さびトタン壁を何とかしたいと思っていました。そして、日本ペイントさんがFacebookを読まれていたのもたまたまです。手塚さんがお話しされたように、このプロジェクトは偶然が重なり合って実現されたものです。


― アートのデザインはどのようにして生まれたのでしょうか
(知念氏)
流山に来たことがないクレアにも分かりやすいよう、「絵巻物」のように、ストーリー性があって流れが分かりやすいデザインの方が良いのではないかと案が出ました。一方、クレアは約100mを10mごとに分割し、1セクションごとにデザインのテーマを集中させたいと考えていました。それにぴったりとはまるのが、日本の四季だったようで、来日前からそれぞれのテーマに当てはまるカラースキームなどを送ってくれました。
実際に何の絵柄を描くかは、流山に住みながら市民の方々に実際にインタビューをしながら決めていきました。インタビューの中で流山の歴史や建造物、市民が大事にしているものなどをリサーチしていきました。そうして、できあがった絵柄には、春夏秋冬の中に流山の過去・現在・未来が描かれていました。




― 当時のアート制作中の雰囲気や、プロジェクトに対する市民の反応は
(知念様)
日本ペイントさんからは、さび止め塗料の他に、6色(赤・青・緑・黄・白・黒)の水性塗料をご提供いただきました。クレアはその6色を繊細に混ぜ合わせながら30~40色ほどを自由に調色していました。クレアは「塗料は想像以上に伸びが良く、混ぜやすいし、発色も良い。そして何よりも、水で簡単に洗えることが素晴らしい!」と感想を漏らしていました。
また、市民の皆さんにも制作活動に気軽に参画してもらいました。いつもお酒を飲んでいたおじさんにも筆を渡して塗ってもらったところ、塗り終わったころには誇らしげな表情をしていたのが印象的だったとクレアが話してくれました。他にも、まちの小学生にも色塗りを手伝ってもらったりと、さまざまな方々の想いが加わり、アートは無事に完成しました。




★完成したアートの詳細はこちらからもご覧いただけます。


(手塚様)
このプロジェクトは、制作活動がひと段落してからも市民をはじめとして観光客の方からも注目を集め続けていると肌で感じています。完成から5年が経とうとしている現在でも、壁画がプリントか手描きかを確かめようと実際に触れている方や、写真撮影をしている方を見かけます。そして、当時は「アートのデザインがすごいね」と“デザイン”に関して褒められることが大半だったのですが、今現在も壁面は全く色あせせず、きれいな状態を保っている塗料の性能に感嘆した方から、「塗料がまったく退色しないし経年劣化している部分を探す方が難しいね」と塗料に関する感想も頂くくらいなんです。


― 流山市民、海外のアーティスト、machimin。それぞれ異なるバックグラウンドを持つ人たちが一堂に会し、1つの物を制作する困難や、素晴らしい点はなんでしょうか
(手塚様)
「アートを完成させる」という全員が認識している確固たる到達点があったとしても、時にはそれぞれの考え方が相容れず、衝突することがありました。しかしそれは、全員が今まで生きてきた自分の道や、役割に誇りを持っているからこそだと考えています。

物事を進める際に、完全に足並みをそろえる必要はなく、「分かり合えないということを分かり合う」、「全ては理解できないけれど、そういった視点もあるんだね」という受け入れる姿勢が大事なんじゃないかと思いました。そうすることで、自分だけではできない体験ができ、自分だけでは見ることができない風景が広がったのだと思います。


― 手塚様が感じられたアートや塗料の魅力とはなんでしょうか
(手塚様)
プロジェクトが進んでいる時は毎日本当に無我夢中で、当時の気持ちを表すなら「必死だった」というのが相応しいですが、このアートを見ることで、プロジェクトを通して感じたことや、驚いたこと、発見したことを色鮮やかに思い出させてくれます。アートは決して完成したら終了ではなく、「昔はこう思っていたけど、今はこんな風に感じる」というように、時の流れとともに、新たな考え方を生み出してくれる力を持っていると思います。

美術館に展示されているアートは、レベルが高く、なんだか近寄りがたい雰囲気がありますが、まちに普通に置いてある今回のような「まちに開かれた」壁画アートは、市民の人はもちろん、たまたま通りかかった人など、全ての人に開かれていて民主的な存在になっています。“後世に残す・公共に開く、みんなのものにする”ことを目的としたとき、塗料が最適だとこのプロジェクトを通じて感じました。塗料は色をつける以外にも、そのような役割を果たしていると思います。


(左から)当社社員・手塚様・知念様

 

今回のインタビューを通じて、流山駅壁画プロジェクトはさまざまな人々のアイデアや思い、工夫が集まって完成したアートだということが分かりました。そして、手塚様のお話から塗料の基本機能である「彩る」以外に、「公共に開く、みんなのものにする」という新たな視点の気づきを得ることができました。
皆さんも、流鉄流山駅を訪れた際には、ぜひ圧巻のアートをご覧ください。当社は今後も、塗料を通じて社会に幸せを届ける活動に取り組んでまいります。


■ machimin(まちみん)について
旧市街地の入り口である流鉄流山駅の元タクシー車庫を、「おばあちゃんの家の縁側」をコンセプトにリノベーションし2018年4月にオープンしたコミュニティスペース 兼 観光案内所 兼 菓子製造所。「まちをみんなでつくる」の意を込め“machimin”と命名。
株式会社WaCreationが運営。
公式Instagramはこちら(アカウント名:@machimin_nagareyama


■ 株式会社WaCreationについて
株式会社WaCreationは「壁を壊して、輪を創る」、「ないなら創る、欲しいなら創る、あるもの活かす、みんなでやる」という考え方を大切にしており、“人がいつ何時でも活きて生きることができる毎日”を目指すまちづくり会社です。
公式HP:https://wacreation.com/


【HAPPY PAINT PROJECTについて】
日本ペイント株式会社が「塗料を通じて社会に幸せをお届けする」というコンセプトで2017年から実施し始めたCSR活動です。この活動の一環として、当社とスポンサー契約を結んでいる日本ペイントスペシャルアンバサダーのSHOGEN氏とともに、全国各地で地域貢献のために、様々なペイントイベントも実施しています。イベントを通じて、地域活性化へのご支援、学校教育へのサポート、子供たちのいい思い出作り等、ペイントアートによる社会課題の解決、地域貢献とともにペイントの楽しさを世の中に伝え、新たな塗料・塗装文化の創造にも役立っております。同プロジェクトは、現在(2024年12月末時点)まで全国各地で累計160回のイベントを実施し、累計の参加人数が約9,150名に達しています。また、2019年より「ペイントでハッピーをお届けしたい」という思いから、「HAPPY PAINT PROJECT」というプロジェクト名を付けております。
CSR活動URL:https://www.nipponpaint.co.jp/csr/
 

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@happypaintproject_nipponpaint


【お問い合わせ先】
日本ペイント株式会社 広報室 柳谷・山岡
TEL:03-5479-3616  E-mail:nptumarkpr@nipponpaint.jp