室内の壁色ひとつで、暮らしも心もきっと動き出す。

家を選ぶ時。家を建てる時。あなたはどこに一番こだわりますか?
広さ、間取り、日当たり、周辺の環境、駅からの距離…様々な条件を思い巡らせる中で、
「室内の壁の色」にまでこだわる人はどれほどいるでしょうか。
「室内の壁色は、もっと自由であっていいはず」。そう語るのは、アフリカンペイントアーティスト・SHOGENさん。
大手化粧品会社に勤めていたある日、ふと入った雑貨店で目にしたタンザニアのポップアート「ティンガティンガ」に魅了され、
単身アフリカへと渡った彼が、世界を渡り歩く中で見てきた様々な住まい。
そして、今まで暮らしてきた日本の住まいへの新たな気付き。
室内の壁を彩る楽しさと、その可能性について語ってくれました。

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SHOGENさんは海外経験が豊富ですが、
海外の家と日本の家には
どのような差があると感じますか。

SHOGEN 海外の家は、内装にあまり壁紙を使わないんですよね。自分たちで壁を塗料で塗ったり、業者さんに細かく指示して塗ってもらったり、自分たちの好きな空間を、自分たちで作り上げているんです。逆に、日本では真っ白な壁紙が多いですよね。海外の方は、日本の室内の壁のほとんどが白いことに驚かれるんですよ。

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どうして日本の室内の壁の色は、白が多いんでしょうか。

SHOGEN 家を建てる上での効率性が重視されていると感じます。みんな間取りにはこだわるのに、壁の色には無難な色を選び、さほどこだわらない。家を建てる際に、毎日を過ごす生活空間にもっと思いを込めると、それが壁の色となって現れると思うんですけどね。
家を建築する住宅会社や、販売する不動産会社にとっても、色の選択肢が広がるとビジネス的な付加価値をつけられるはずなんです。特に、これからは海外から移住してくる方も増えることが予想されますから、室内の壁に色を取り入れることをもっと考えてもいいと思います。
でも、それ以前に「壁を自由に彩る」という意識があまりないのかもしれません。子どもの頃から「壁に落書きすると怒られる」というイメージもありますし、学校の授業で画を描くときも、ほぼルール通りスケッチブックの上だけですからね。教育の現場でも型にはめず、心のおもむくまま自由に創作させてあげることで、子どもたちの発想力をより高めてあげられるのではないかと思います。

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海外のように室内の壁の色を変えることで、なにか変化が生まれると思いますか。

SHOGEN まず、家に対する愛着が強くなると思います。以前、とあるお宅の内装をペイントしたことがあったんですが、オーナーは「“帰りたくなる家”になったよ」とおっしゃってました。そのお宅は、夫婦共働きで忙しくて、家を建てるときも業者さんにほぼ一任されていました。でも、実際住んでみるとリビングが思っていたより暗く狭く感じたそうです。家族が集まる場所だから、少しでも広くもっと明るい空間にしたいということでした。そこで、壁の一部分を薄いレモン色の塗料で塗ったら、すごく温かみのある素敵な空間になったんです。また、空間にメリハリが付いたからか「間取りは同じなのに、広くなったような気がする」ともおっしゃってました。

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色がプラスされるだけで
空間の印象が大きく変わるんですね。

SHOGEN そうなんです。自分たちでこだわって好きな色を選んで、壁に塗るという過程を踏むことで、さらに家に愛着がわき、空間にもっとこだわりが生まれると思うんです。そのお宅では、空間に合わせてインテリアも揃え直したそうです。さらに、普段からきちんと身の回りを整頓するようになって、今まで家に人を呼んだことがなかったのに、友人をたくさん呼ぶようになったそうです。奥さまいわく「今まで以上に心が豊かになり、子供ともより楽しく笑顔で暮らせるようになった」とか。

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いざ塗るとしても、色を選ぶのもなかなか難しそうですよね。

SHOGEN 僕が見てきたアフリカの家では、太陽のようなオレンジや大地の色に近いアースベージュがよく塗られていました。ひとつひとつの色に意味があり、彼らの思いが込められています。
日本にも地域によって美しい海や山があったりして、それぞれの環境に馴染む色が必ずあると思うので、アフリカのみなさんの手順をひとつの参考にしていただけると、色の選び方も少しは楽になるのかなと思います。
塗料だと組み合わせ次第で色数も無限だし、ハケの使い方によって微妙な表情もつけられるので、自分の思いをしっかり込めた壁にできるはずです。

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塗料ならではの魅力は。

SHOGEN 壁の塗装には“失敗”という概念がありません。塗りムラも味わいになるし、色が気に入らなかったら単純に塗り替えればいいと思います。アフリカでは、2ヶ月に1回ぐらいの頻度で壁を塗り替えたりします。まさに、模様替えをするような感覚です。
だから、最初は自分で塗ること自体難しいでしょうから、基本は業者さんにお任せしつつ、家のどこか1箇所だけお子さまと一緒に塗るというのもありだと思います。その壁を見るたびに塗った日のことを思い出せる「家族の新たな思い出の場所」にもなりますからね。実際に聞いたエピソードですが、あるご家庭でお子さまにも壁を塗ってもらったら、その壁だけは毎回必ずお子さまが自分でピカピカに掃除するようになったそうです。やっぱり思い入れが強くなるんでしょうね。

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室内の壁に塗装をしてみたい方へ、なにかアドバイスはありますか。

SHOGEN そうですね。私の提案ですが、たとえば手始めに好きな大きさのキャンパスを壁に貼って、その上から好きな色を塗ったり、画を描いたりしてみるのはいかがでしょうか。キャンバス自体を剥がせば簡単に元に戻せますし、気分に合わせて模様替えのような感覚で気軽にイメージチェンジできます。お子さまも自由に落書きできて、きっと喜んでくれると思いますよ。
都市部では、土地や間取りも狭い家が多い。そんな家だからこそ、部屋ごとに思い思いの色を塗って個性を出すことで気分も変わるし、色によっては部屋の奥行き感も大きく違って見えるはずです。ぜひ、ご自身の家に対する思いと今一度向き合って、本当に居心地のいい空間を作ってもらえればと思います。

本日はありがとうございました。

Works

JR新宮駅
新宿マルイ
コンゴ民主共和国大使館施設

SHOGEN 〈アフリカンペイントアーティスト〉

1986年、京都府生まれ。大学卒業後、サラリーマン生活を送るが、アフリカの絵画技法に魅了され、2014年に単身タンザニアに渡航。現地のアーティストに師事し、その技法を学ぶ。現在は、その技法の要素を取り入れながら、独自のセンスで解釈した絵を創作しつつ、“ペンキの伝道師”・ペイントアーティストとしても活動中。日本ペイント「パーフェクトインテリアEMO」イメージビデオにも出演中。